パンデミック後の痛みを伴う世界における協調的かつ創造的な調達
作成者 Chris Atkins
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11月 2021 作成者 Chris Atkins
インサイトに戻るコロナ2019がもたらした商業的大混乱に対する自然な反応として、競争的な交渉の姿勢を取ることは理解できるでしょう。しかし、逆説的ではありますが、今こそ調達チームがサプライヤーと協力的かつ創造的な解決策を模索する時なのです。
皆さんはゲーム理論における「囚人のジレンマ」をご存知でしょうか?これは、個人が自己の利益のために行動しても、最適な結果が得られないという逆説的な状況を示すために考案されました。演習のネタバレになってしまうので詳細は省きますが、ゲーム理論の応用で、2人以上のプレイヤーがある苦境に対して、全員が「勝つ」ために互いの対応を信頼し合う必要がある状況を表現しています。
これは、今日、多くの調達担当者が直面している状況に直接関連するものです。
私は最近、世界的に有名な消費財の調達チームと話をしましたが、苦境に置かれているようでした。その組織は、一連のコスト値上げに見舞われ、さらに、重要な商品の在庫不足と配給制限に直面しているのです。
何が起こっているのでしょうか?
話を1年前に戻しましょう。私たちは、一生に一度経験するかしないかのパンデミックの真っ只中にいました。既存のルールは通用せず、需要は予測不可能であり、サプライチェーンは生き残ることに集中していました。このような環境下、商品、原材料、エネルギーコストの高騰にもかかわらず、多くのサプライヤーは、既存の長期的で不利な契約にとらわれているか、不確実性の高い時期に値上げをしてビジネスを失うことに消極的な姿勢を取っているという状況でした。
この状況に耐えられる時間は限定的で、サプライヤーには失うものはありませんでした。マージンやキャッシュフローへの圧力があまりにも大きかったため、値上げをせざるを得ませんでした。
では、今はどうなっているのでしょうか。
調達担当者がさらなる値上げに備えて在庫を確保しようとするため、需要がピークに達しています。また、サプライヤーが契約上の義務をすべて果たそうとするため、配給制になっていることも確認されています。これは、厳しい決断が下され、収益性の低い分野が犠牲になり、状況が悪化することを意味します。
今後どうなっていくのでしょうか?
倉庫はいっぱいになり、商品価格は固定化され、需要は減り、サプライヤーは、おそらくは高い人件費(残業代、契約従業員)をかけて急いで生産した在庫を抱えているなど、3ヶ月から6ヶ月後の世界は全く違ったものになっていることでしょう
どうすればいいのでしょうか?
囚人のジレンマと同じように、両者の動機は相反するように感じられますが、逆説的に言えば、今こそ協力すべき時なのです。過去数年間は、取引型の調達が特徴的でした。しかし、今こそ変革のときです。ここでは、それを実現するための4つの方法を紹介します。
1:サプライヤーの細分化
サプライヤーは現在、誰に製品を供給し、どの製品に集中するかについて、戦略的(および戦術的)な選択をしています。
今こそ、サプライヤーベースを見渡して、長期的なパートナーを見極めましょう。現在、そして将来にわたって最も有益な影響をもたらす戦略を決定してください。これは短期的に有効で、サプライヤーが接触を始める前に彼らとの会話を計画し、ビジネスの依存関係やそのサプライヤーの相対的な価値に基づいて交渉に対処する方法を確立することができます。そうすることで、受け身の対応ではなく、熟考された対応ができます。
2:SRM - サプライヤー・リレーションシップ・マネジメント
長年にわたり、B2B環境ではCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の概念が浸透してきました。この激動の時代には、同じコンセプトを、最も大切な、あるいは最も脆弱な供給体制に適用することができます。小売業界に倣って、将来を見据えた共同事業計画(JBP)を策定し、供給と価格の自然な変動を平準化することで、サプライヤーとの関係を積極的に管理する戦略を今すぐ実行しましょう。
3:規則の緩和
今は、別の状況下では交渉の余地はないとしている契約の側面についても、見直す時かもしれません。支払い条件、契約期間、注文のリードタイム、在庫管理などです。サプライヤーのビジネスと、その悩みの種はどこにあるのかを考えてみましょう。相手の立場になって、この「饗宴と飢餓の時代」を乗り切るため、自社のリソースをどう活用するかを話し合ってみてください。
社内での議論が難航することは承知していますが、例えば、一定期間支払期限を短くした場合のコストへの影響を、発生しうるコスト増や在庫切れの場合と対比させて把握することは、計算する価値があります。
4:無形価値の統合
取引量の多い市場では、価格や数量など、目に見えるものにますます焦点が当てられるようになっています。しかし今は、サプライチェーンの耐性、在庫の安全性、革新的な問題解決などの、評価が難しい無形要素が、価値ある存在になります。自社でこのような不確定要素をどのように評価するか検討し、その価値を交渉の方程式に組み込んでください。
相手と同じ戦法で戦っていては、長期的な視点に立つことは難しいでしょう。取引的側面に集中することを強いられると、創造力を発揮することが難しくなります。直感に従って争っていると、協力することは難しいでしょう。
しかし、そこに答えがある場合もあります。